雇用保険 不正受給 解説
雇保法第10条の4・第34条不正受給とは
雇用保険法第10条の4(不正受給の返還・納付命令)e-Gov↗
偽りその他不正の行為により失業等給付・育児休業給付の支給を受けた者に対して、政府は支給した金額の全部または一部の返還を命じ、さらに返還を命じた金額と同額以下の金額の納付を命じることができる。不正受給は「偽り」または「その他不正の行為」により給付を受けることが要件。単純な誤申告は不正受給に該当しない場合がある。
不正受給に対する制裁(3つのペナルティ)
① 返還命令
不正に受給した金額の全部または一部を返還させる
雇保法第10条の4第1項
雇保法第10条の4第1項
② 納付命令(2倍上乗せ)
返還命令額と同額以下の追加納付を命じることができる
→ 最大で不正受給額の合計3倍を納付
雇保法第10条の4第1項
→ 最大で不正受給額の合計3倍を納付
雇保法第10条の4第1項
③ 給付制限
不正受給をした者には、その後3年間、失業等給付・育児休業給付を支給しない
雇保法第34条
雇保法第34条
「3倍返し」のしくみ:不正受給額100万円 → 返還100万円 + 納付命令100万円(上限)= 計200万円。返還命令額と納付命令額の合計は最大で不正受給額の2倍。元の受給分を含めると実質的に3倍の負担。
事業主の連帯責任(雇保法第10条の4第2項)e-Gov↗
事業主が関与した場合の連帯納付責任
不正受給が事業主の虚偽の届出・報告・証明によって行われたとき、その事業主は当該受給者と連帯して返還額・納付額を納付する義務を負う。
| ケース | 責任 |
|---|---|
| 受給者のみが不正を行った | 受給者のみが返還・納付義務を負う |
| 事業主が虚偽の証明書を発行 | 受給者と事業主が連帯して納付義務を負う |
| 事業主だけが虚偽申告(受給者は善意) | 事業主が返還・納付義務を負う |
不正受給の具体例
| 類型 | 具体例 |
|---|---|
| 就労の隠蔽 | 就職・アルバイトをしているのに申告せずに基本手当を受給 |
| 離職理由の偽り | 自己都合退職なのに会社都合・特定受給資格者として申告 |
| 事業主の虚偽証明 | 事業主が実際より遅い離職日で離職票を作成 |
| 育児休業給付の不正 | 育児休業中に就労しているのに申告せずに給付を受給 |
| 求職活動の偽装 | 実際には求職活動をしていないのにしたように申告 |
刑事罰(雇保法第83条)e-Gov↗
詐欺罪・雇用保険法違反
不正受給は刑法上の詐欺罪(10年以下の懲役)が成立しうる。また、雇用保険法第83条により、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性がある。
事業主が不正に関与した場合も同様の刑事責任を問われる。
試験対策ポイント
1. 3倍返しの計算構造
返還命令(1倍)+ 納付命令(最大1倍)= 最大2倍。元の受給分を含めると実質3倍。「3倍を返還する」ではなく「返還+同額以下の納付=最大2倍の支払い」が正確な表現。
2. 給付制限は3年間
不正受給後は3年間の給付制限。自己都合退職の給付制限(2か月・正当理由なし)と区別すること。3. 事業主の連帯責任の要件
事業主が連帯責任を負うのは「虚偽の届出・報告・証明」をした場合に限られる。単に雇用していただけでは連帯責任は生じない。
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