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仕事中のケガは労災?健保?正しい使い分けと申請手続きを解説

2026年4月 | カテゴリ:実務

「仕事中に転んでケガをした。でも会社に迷惑をかけたくないし、とりあえず健康保険で病院に行った」というケースは実際によくあります。しかし、業務中・通勤中のケガに健康保険を使うことは原則として認められていません。この記事では、労災保険と健康保険の適用区分・正しい申請手順・誤って健保を使った場合の対処法を解説します。

業務上のケガ・病気は「労災保険」が原則

労働者災害補償保険(労災保険)は、業務上または通勤中に発生した傷病・死亡を対象とする保険です。健康保険は業務外の傷病を対象としており、業務上の傷病には適用されないと法律で定められています(健康保険法第55条)。

労災保険が適用される場合
・業務遂行中のケガ(作業中の転倒、工具による切り傷など)
・業務に起因する病気(職業病、過重労働による疾患など)
・通勤途中のケガ(自宅〜会社の合理的な経路上での事故)

健康保険が適用される場合
・業務外の私傷病(休日のスポーツ中のケガ、自宅での転倒など)
・通勤以外の私的な移動中のケガ

業務上かどうかの判断基準

「業務上」と認定されるには、①業務遂行性(会社の指揮命令下にあったか)と②業務起因性(業務が原因でケガや病気が発生したか)の両方を満たす必要があります。単に職場にいた時間中に起きた出来事であっても、業務と無関係であれば業務上とは認められません。

たとえば、昼休みに会社の食堂で転倒した場合は、一般的に業務遂行性があるとされ労災として認定される可能性があります。一方、就業時間外に社内でサッカーをしていてケガをした場合は、業務起因性がないとして労災とならない可能性が高いです。判断が難しい場合は、労働基準監督署に相談することをお勧めします。

誤って健康保険を使ってしまったら

業務上のケガに誤って健康保険を使ってしまった場合でも、後から労災保険に切り替えることができます。手続きとしては、まず労働基準監督署に労災保険の請求を行い、認定を受けた後に健康保険組合・協会けんぽに対して「第三者行為による傷病届」に相当する手続き(健保組合への返還)を行います。

医療機関側も、患者が後から「実は労災でした」と申し出た場合は診療報酬の請求先を変更する対応が可能です。ただし時間が経つほど手続きが煩雑になるため、業務中のケガだと気づいたら早めに事業主・人事部門に相談することが重要です。

労災保険の主な給付

労災保険が認定されると、健康保険にはない手厚い補償が受けられます。特に療養(補償)給付は自己負担ゼロで治療を受けられる点が健康保険と大きく異なります。休業した場合の休業(補償)給付は給付基礎日額の60%+特別支給金20%で実質80%が補填されます。

給付名内容
療養(補償)給付治療費の全額(自己負担なし)
休業(補償)給付休業4日目から給付基礎日額の60%
休業特別支給金給付基礎日額の20%(合計80%)
障害(補償)給付障害が残った場合の年金または一時金
遺族(補償)給付死亡した場合の遺族への年金または一時金

まとめ

業務中・通勤中のケガは労災保険、プライベートのケガや病気は健康保険という原則を覚えておきましょう。労災申請を「会社に迷惑がかかる」と思って遠慮する必要はありません。労災保険料は全額事業主負担であり、労働者は一切負担していないからです。労災隠しは事業主にとって法律違反(労働安全衛生法違反)となります。

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