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傷病手当金・労災 休業補償給付 調整 解説

健保法第108条 / 労災法第14条
傷病手当金(健保法)と労災の休業補償給付(労災法)は、いずれも「働けない期間」の所得補填という目的は同じですが、 対象となる傷病の原因(業務上・業務外)が異なります。同一傷病に両給付が競合する場面は原則ないが、競合した場合は労災が優先されます。

2つの給付の基本的な違い

傷病手当金 休業補償給付(労災)
根拠 健保法第99条↗ 労災法第14条↗
対象傷病 業務外の傷病(業務上は健保の対象外) 業務上の傷病(労災認定が必要)
支給額 標準報酬日額の2/3 給付基礎日額の60%(+特別支給金20%)
待期 継続した3日間(待期完成) 待期なし(1日目から支給)
支給期間 通算1年6ヶ月 療養が必要な間(上限なし)

調整が生じる場面

① 業務上傷病に健保が誤適用される場合

業務上の傷病には健保の療養給付・傷病手当金は原則支給されない(健保法第55条)。 しかし労災認定が遅れている間は一時的に健保が適用されることがある。 後に労災と認定された場合、健保が支給した分は健保への返還が必要となる。

② 同一傷病に複数の起因が混在する場合

例:腰痛が業務上の原因と業務外の原因の両方を持つ場合。 業務起因性が認められた時点で労災が適用され、健保の傷病手当金は調整(支給停止)される。

③ 退職後の傷病手当金継続受給中に労災認定される場合

在職中に業務外傷病で傷病手当金を受給し、退職後も継続受給中に、 同一傷病が実は業務上だったと認定された場合:

  • 退職後は健保の被保険者でないため、健保給付は資格喪失後継続給付として受給していた
  • 労災認定後は労災の休業補償給付に切り替わる
  • 重複受給となった期間は健保への返還が求められる

健保法第108条の「調整」規定

健保法第108条(労災との調整)e-Gov↗

業務上の傷病により労災保険法(または船員保険法・国家公務員共済等)による給付を受けられる場合、 健康保険の傷病手当金は支給しない(支給停止)。

ただし:労災給付が傷病手当金の額より低い場合は差額を支給する。
* 傷病手当金 > 労災休業補償給付 → 差額分を傷病手当金として支給
* 傷病手当金 ≦ 労災休業補償給付 → 傷病手当金は全額不支給

具体的な計算例

標準報酬日額 10,000円 / 給付基礎日額 9,000円 の場合:
・傷病手当金 = 10,000円 × 2/3 = 6,667円
・休業補償給付 = 9,000円 × 60% = 5,400円(特別支給金除く)
→ 傷病手当金(6,667円) > 休業補償給付(5,400円) → 差額 1,267円 を傷病手当金として支給

試験頻出ポイント

  • 業務上傷病には健保は適用されない(健保法55条)→ 労災が一次的に適用
  • 労災と健保が競合した場合の原則:労災が優先(健保は調整)
  • 差額支給:傷病手当金 > 労災給付 の場合のみ健保から差額支給
  • 健保法108条は傷病手当金のみ規定(療養給付は55条で別途規制)
  • 同一傷病で健保と労災の両方を満額受給することはできない